
こんな疑問を解決する記事になっています。
2012年4月1日から一般名処方による処方せんを発行した場合に、一般名処方加算が取れるようになりました。
この制度がスタートしたことに伴い、厚労省のHPに一般名処方マスタが公開されました。
このマスタを見て「少ない気がする」と感じた方が多いのではないでしょうか?
この記事では厚労省の一般名マスタの仕組みや、一般名処方した場合に加算が取れるようになった経緯を解説します。
処方薬には商品名と一般名がある
国が一般名処方を推進する理由を理解するためには、そもそも一般名処方とは何か?を知る必要があります。
そこで、まずは一般名処方について解説します。
商品名と一般名の違い
処方せんに書かれているお薬には「商品名」と「一般名」があります。
代表的なかぜ薬を例に挙げます。
商品名 | 一般名 |
PL配合顆粒 | プロメタジン1.35%等配合非ピリン系感冒剤 |
サラザック配合顆粒 | |
セラピナ配合顆粒 | |
トーワチーム配合顆粒 | |
マリキナ配合顆粒 |
商品名は各製薬会社オリジナルの名前なのでそれぞれ違います。
これらの商品名の成分は同じで、剤型・薬効・効能・効果も同じです。
一般名は成分を元にした名前となっています。
- 商品名:製薬メーカーが独自に決めたお薬の名前(商品の名前)
- 一般名:主にお薬の成分を元にした名前
このように区別すると分かりやすいですね。
一般名処方加算が取れるようになる前は、商品名で処方せんに書かれていました。
加算が取れるようになってからは、徐々に一般名で処方せんに書かれるケースが増えてきたと思います。
一般名処方は医療費削減が目的
国が一般名処方を推し進める最大の理由は医療費が削減できるからです。
商品名 | 一般名 |
PL配合顆粒(先発:6.5円) | プロメタジン1.35%等配合非ピリン系感冒剤 |
サラザック配合顆粒(後発:6.3円) | |
セラピナ配合顆粒(後発:6.3円) | |
トーワチーム配合顆粒(後発:6.3円) | |
マリキナ配合顆粒(後発:6.3円) |
先ほどの表に先発品/後発品の区別と薬価を付け加えてみました。
処方せんに一般名で記載すると、処方せんを受取った調剤薬局は商品名の中から好きなお薬を患者さんに渡すことができます。
効能効果が同じであれば、患者さんは安い後発品を選びますよね。
国としても、安いお薬を使ってくれた方が負担が軽くなります。
患者さんは窓口で1割~3割支払いますが、患者さんが国民健康保険の加入者であれば残りの7割~9割は国が負担します。
同じ成分・薬効・効能・効果であれば、できるだけ安いお薬を使ってほしいわけです。
そのため、一般名処方加算というルールを新設してでも一般名処方を推し進めたい、つまり、ジェネリックを推進したいというのが国の思惑です。
一般名処方は調剤薬局の負担軽減も考慮
一般名処方は調剤薬局の負担軽減にもつながります。
商品名 | 一般名 |
PL配合顆粒 | プロメタジン1.35%等配合非ピリン系感冒剤 |
サラザック配合顆粒 | |
セラピナ配合顆粒 | |
トーワチーム配合顆粒 | |
マリキナ配合顆粒 |
風邪の患者さんに対して、医療機関AはPL配合顆粒を、医療機関Bはサラザック配合顆粒を処方せんに書いて渡すとします。
調剤薬局がこれらの処方せんを受取ると、PL配合顆粒とサラザック配合顆粒を患者さんに処方しなくてはいけません。
もしかしたら、セラピナ配合顆粒やトーワチーム配合顆粒、マリキナ配合顆粒が書かれた処方せんを患者さんが持ってくるかも・・・。
そう考えると、調剤薬局は処方せんにどの商品名が書かれていても対応できるように、全ての商品名を在庫として抱えておくことになります。
一般名処方によって、この在庫問題は解決されます。
なぜなら、一般名で処方せんに書いてくれれば、調剤薬局は商品名の中から好きなお薬を患者さんに処方できるので、全ての商品名を在庫として抱える必要が無くなるからです。
このように、一般名処方は調剤薬局の在庫管理の負担軽減にも一役買っているのです。
一般名処方マスタの仕組み
一般名について理解できたので、今度は一般名処方マスタの仕組みを解説します。
一般名処方マスタとして掲載されているお薬にはいくつか条件があります。
これから解説する条件を全て満たしたお薬のみ一般名処方マスタとして掲載されています。
前提1:後発品がある
一般名処方マスタに掲載されているものは、必ず後発品が存在するお薬です。
先発品しか存在しないお薬は一般名処方マスタには掲載されてません。
商品名 | 成分 |
ブリカニール錠2mg | テルブタリン硫酸塩 |
例えばこのお薬は先発品で、後発品がありません。
成分を元に一般名処方っぽく処方せんに書くとすると「テルブタリン硫酸塩錠2mg」でしょうか。
「テルブタリン硫酸塩錠2mg」と処方せんに書かれても、それに対応する商品名は先発品のブリカニール錠2mgしかありません。
後発品を使うことにならないので医療費削減になりません。
そのため、このお薬は一般名処方マスタとして掲載されていません。
前提2:先発品より後発品のほうが薬価が低い
基本的に、後発品は先発品より薬価が低いです。
ただし、例外があります。
中には、先発品と同じ薬価の後発品、先発品より薬価が高い後発品があります。
こういったお薬は一般名処方マスタには掲載されていません。
商品名 | 成分 |
レキソタン錠1(先発:5.7円) | ブロマゼパム |
ブロマゼパム1mg錠(後発:5.7円) |
このお薬は先発品と後発品が同じ値段です。(2020年12月時点)
仮に一般名処方マスタっぽく処方せんに書くとすると「ブロマゼパム錠1mg」でしょうか。
「ブロマゼパム錠1mg」と書かれた処方せんを受取った調剤薬局は、先発品と後発品のどちらを選んでもOKです。
調剤薬局としては在庫問題が解決するのですが、医療費削減の目的を果たせないので一般名処方マスタとしての掲載はされていません。
前提3:注射薬は除外
理由はよくわかりませんが、一般名処方マスタには注射薬がまったく掲載されてません。
内服薬と外用薬のみです。
注射薬を院外処方することを想定してないのかもしれません。
在宅自己注射用の薬剤を院外処方するケースはあると思うんですけどね。
まとめ
ジェネリック推進を目的としてスタートした一般名処方。
一般名になじみのない調剤薬局は、制度開始当初は大混乱だったかもしれません。
一般名処方をすることで、患者さんにとっても国にとっても負担軽減につながるので、制度がもっと浸透することを願います。
この記事を読んで一般名処方についてより知識が深まれば幸いです。